書籍『今日の芸術 – 岡本太郎』感想と考察

結論

自分が日頃から対峙している「アートとデザイン」問題は、岡本太郎からの影響だったのかもしれない。全クリエイターにおすすめの熱苦しい一冊

鑑賞前の状況

『自分の中に毒を持て』と同様、新年会で知り合った方の影響で再読しました。最後に読んだのは10年以上前だと思います。

鑑賞後の感想と考察

岡本太郎は、徹底的に、芸術は生々しく革新的であることを求めます。

僕が言うところの「アートとデザイン」を彼は「芸術と芸」と区別します。さらにテクニックとして「技術と技能」も区別するんです。

芸術と技術は創造的かつ革新的に、古いものを否定していく性質であるのに対し、芸と技能は熟練によって到達するものであるため、同じことの繰り返しが必要なんだそう。

どちらが良い悪いではなく、区別しようと言うことです。論理的にピタッとハマる熱苦しい文章で気持ち良く読めます。

アートとデザイン、芸術と芸の問題については、個人的にマーケティングにおけるイノベーター理論とシンクロするように感じた。(普及学(イノベーター理論) – Wikipedia

イノベーター理論でのイノベーターとアーリーアダプター辺りがアート、アーリーマジョリティ以降がデザインと芸なのではないかと感じます。デザインは世の中に浸透した後で、流行、心地よさなどを人に与えるなど、しっかりと目的を持っている。対し、アートと芸術は無目的であり、斬新、心地悪い、何が何だかわからない、岡本太郎がいうところの「いやったらしい」ものであるのではないか。(岡本太郎はストイックなので、イノベーター以外は芸術と言わないでしょうがね。。)

ポップミュージックにおいてもアーティストがブレイクする際は、新しく、奇妙で、奇抜な「今までに無い」楽曲が多い気がします。ビートルズのデビューも「Love Me Do」だし、エルヴィスのメジャー移籍第一弾は「Heartbreak Hotel」ですし。。

話は変わりますが、僕とアサコさんには、よく研修(&飲み)に連れ出してくれる「アート兄貴(仮名)」が居ます。彼には以前、鹿児島の「しょうぶ学園」という障害者支援センターに連れて行ってもらったんです。その施設は、支援の一環としてアートや音楽を大胆に取り入れていて、そこで産み出される作品の「凄み」が話題になってるんですね。最初に「しょうぶ学園」のことを知ったのも国立新美術館のポップアップショップでしたし。

そのしょうぶ学園で実際に工房や作品を拝見したときほど、芸術の「凄み」を感じたことはありません。これは体感してもらうしかないと思います。ぞわっとする。鳥肌が立つ。原始的かつ無目的で爆発している。パワーに満ち溢れている。勝てる気がしない。完膚なきまでの敗北、叩きのめされました。

岡本太郎氏はこうおっしゃってます。「芸術はここちよくあってはならない」「芸術はいやったらしい」「芸術はきれいであってはならない」「うまくあってはならない」

しょうぶ学園の作品はこの定義でいうと100点満点なのではなかろうか。そんなことを思い出しました。

心に新たな「問い」が発生した

芸術そのものも、芸術の枠内に収まっていることは自己矛盾になるのではないか?芸術が、絵画や立体、音楽などのジャンル内にとどまることは、作品がもし無目的で、新しいものであったとしても、ジャンルが既存のものである限り、本当の意味での芸術とは言えないのではないか?これらが、新たに心に芽生えた問いでございます。

例えば自分がロックミュージックに衝撃を受けてしまったので、ロックミュージックの枠内で創作活動を行っている。そこに芸術性はどう付与するのか?過去のロックを否定しつつ新しいロックを創り上げたとして、それがロックの枠内に収まっているのであれば芸術とは言えないような気もする。。

引き続き未解決の「問い」

なぜアート・芸術を発表するのか?発表したくなるのか?人に見せたくなるのはなぜなのか?これらの問いの答えは読了後にもやはりわからなかった。

どうして自分は家で弾き語りや練習するだけで満足できず、身銭を切ってまで音源を発表しライブを行いたくなるのか?知らなくても、考えなくても良いのかもしれないのだけど、知りたい。単なる承認欲求であるとも思えないし、そもそも、もし自分の指向性がアートや芸術であるのならば、作品の出発地点は、無目的で、新しく、心地悪いものであることを受け入れる必要がある。無目的で心地悪いものを世の中に発表し続けるのは、いや、発表し続けたくなるというのは、どういう精神状態なのだろう?

何か参考になるおすすめの書籍などがあればぜひご一報くださいませ。

鑑賞の背景

新年会で知り合った方の影響で再読。本もCDもあまり売ったり捨てたりしない方が良いですね。断捨離もほどほどにしよう。。

リンク

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